撮影の裏話、色々。その4。
「L'Ilya
〜イリヤ 佐藤監督宅」
2000年製作 監督:佐藤 智也
いよいよ撮影も室内のセットとなる。場所は多摩川沿いの雰囲気のいい住宅街のマンションの1室。
最初に私が地図を頼りに行った時は、近くまで行ってすぐに分かった。
というのも、途中でマツオカさんとすれ違ったのもあるのだけれども
ベランダから照明が吊られ、異常にたくさんの人が作業している部屋がすぐに分かったので。
で、その撮影現場。それは、監督自身の部屋。というか、住まいそのまま全部。
監督はこの映画のためだけに部屋を探し、引越し、そこにセットを作りそこで生活されたのである。
更にこの部屋、「普通の」照明器具が全くない。「普通の」というのは、いわゆる「普通の」。
「普通じゃない」照明器具ならあった、らしい。つまりは照明の燈体(あれ?トウタイってこんな字かくんだっけ??)
室内での撮影の時、まず照明チームはその家の電源をチェックし、いったい何ワットまで使うことが出来るのか
まず知らないといけない。じゃないとブレーカーが落ちる、ヒューズが飛ぶ、危険なこともありうるので。
この監督の部屋も確か撮影用に増やしたんじゃなかったかな。そこまで徹底していた。
もちろん暖房器具もない、そんな部屋に愛人の「プリスちゃん」とともに生活。
家賃も結構良かったんではないか、と。だって広かったし、川沿いだし、いい感じ。
まず玄関があって、そこから廊下ですぐ右手に風呂場と前面所、トイレがある。
でその向かいには台所があり、その横にまずは一部屋ある。
で、その奥にリビングがあり、その横に更にもう一部屋ある。典型的な2LDKだった。
なので監督も撮影が終わったらとっとと引っ越すつもりだったらしいのだが。予想以上の撮影期間となってしまい
監督も引っ越すに引っ越せない状態だったようで。
ここで撮影されたのは、室内場面のほとんど全部。
撮影はほぼ週末に集中していたため、私は土曜日日曜日のたびに東横線に乗りこの現場まで来たのだ。
大体撮影は昼のシーンがあれば朝ごろに入り、そのまま時間が許す限り、撮りまくる。
よくご飯で弁当が出たが、それを控え室となった一角の部屋でパクつきながら。
スタッフと役者分の大量の紙コップ。差し入れのお菓子の数々。今でもはっきり覚えている。
この家での撮影の私の中で大変だったのは、やはり恋人が死ぬ、死んだ後の色々でしょう。
恋人の幽霊を見た後、写真を破りまくって最後コップを投げつけて割るシーン。
最後のコップを投げる時、自分でもビックリするぐらい強く投げてしまい、木っ端微塵でした。
やはりそれだけの感情の高ぶりもあったけれど、それよりもその一連の動きを全てコマ割で撮らなければならなかったから。
もうガァァァァァァッと激しく破っていく、でも一つ一つの動きを一時停止で続けなければいけないのは、実はとても大変で。
私も大変だけど、カメラマンも実は大変だった。私の動きの速さについてこなければならなかったし。
このシーンだけは、何度も何度もリハーサルをし、細かい動きの全てをつけてから、みんなが見守る中撮影。
で、雰囲気を盛り上げるためにバックミュージックで流すか、といっていたのが、あの「キングダム」のオープニング。
監督は『ダンサー・イン・ザ・ダーク』などのラース・フォン・トリアー。
元々はテレビシリーズで、第1章から第4章まで合わせて10時間ほどありましたが、
(日本のロードショーでは2章ずつ1回5時間ほどの上映でした)まだ完結していません。だそうです。(佐藤監督 談)
あのシーンの本当の音楽は、あのキングダムなのです。はい。(分かる人だけ分かる話)
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