正ノ木(しょうのき)さんの肉フライ



母親の実家のすぐ横の公園で、毎年ゴールデンウィークの時機(5月2〜7日ぐらい)に

「正ノ木さん」が開かれていた。

この「正ノ木さん」というのは、お祭りの名前で、もともとは植木の展示販売がメインだったらしい。

それに、例のお祭りの屋台が便乗して、規模としては大きい方のお祭りに入るのではないかと思う。

母親の子供のころには「見世物小屋」も来ていたらしい(蛙を食べる少年とか、蛇を食べる少女とか)。



私も小さいころから、ゴールデンウィークは「正ノ木さん」と決まっていた。行くと小遣いがもらえたし、

一歩出ればお祭りだし。好きなものをたくさん食べれたし。夢の世界だった。



この「正ノ木さん」には、実は私の祖父も店(屋台)を出していた。

その名も「正ノ木名物 肉フライ」。「正ノ木さん」の時しか店を出さない。

だから1年間でこの店の営業日は4日間だけ。今考えると、超レアーな店。

昔からの「正ノ木さん」を知ってる方だと、絶対に知っているはず。



祖父は染物をしており、その工場(こうば)をちょっと改造して、ちょっとした調理場を作る。

工場(こうば)の中と外に机といすを並べて、ちょっとした食事できるところを作る。

母親を含め、おじさん・おばさん(大人)は皆でその店を手伝う。

孫どもはある程度大きくならないと手伝っちゃいけない。

邪魔をしないように、外で遊んでろと言われる。

でも私は最初の女孫だったから、祖父も色々教えてくれて、結構早くから手伝わせてくれた。

「正ノ木さん」の終わった後で、必ず皆で食事会をして、手伝いの報酬を祖父から皆に渡してくれた。

私も最初に手伝った年に「5千円」もらった。今でも憶えている。



この「肉フライ」は、そのまま「肉のフライ」なのだけれど、ちょっと説明するのは難しい。

でも頑張って説明すると、

まず串(普通の竹串)に、人差し指ぐらいの長さ・大きさに切った豚肉が刺してあって、

それの周りにメリケン粉をグルグルッと巻いて衣をつけて

それをパン粉の上で転がして、ぎゅっと押さえてペッタンコにして(形は団扇のよう)、

で、それを油で揚げる。するとプクーーーーって膨らんでくる(形は風船のよう)、

揚がった物を熱いうちにウスターソースのたるの中にドボンと漬けて(ジュって音がする)、

そのままシャクシャクいただく(サクサクではないのだなぁ、うん、シャクって感じ)。



つまり、中身は全部肉ではなくて、ほとんどが空洞。

でも、この空洞具合が、またたまらない。

この「肉フライ」の売りは、肉じゃなくて、この衣(ころも)だった。



ときどき初めてのお客さんで「何だ、コレ、中身がねぇじゃないか」と文句を人もいたが、

そんな時祖父は「うちのはね、衣(ころも)を食ってください」と一言。

そんな人も、「もう一本」とか言ってまた食べて、「うーん」て唸ったりして

で、お土産に買っていくという感じだった。



別に肉もケチっているわけではなくて、そんな全部が肉だったら食べ切れないし、それは豚カツだ。

この肉の割合と、この衣の割合が、ホントに絶妙で。

まず手伝っていた身内の我々も皆、このフライが大好きだった。いつも、つまんでは怒られた。

毎日食べても飽きなかった。1日に何本食べたかな。でも胸焼けたりはしなかった。

ホントに軽いので何本でも食べられるのだ。



しかも1本100円。コレはずっと変わらなかった。

他の店がどんどん値上がりしていく中(綿菓子なんて600円になったし、たこ焼きも150円が500円?)

この肉フライはずっと100円。消費税にも負けなかった。

常連さんも来るたびに言う 「ここだけは変わらないねぇ」



常連さんも多くて「結婚して他県に嫁いでいった娘に食べさせてあげたいからお土産に・・・」だとか

「僕も子供のころからずっと食べているんです」と、今度は自分の子供をつれてくる人もいたりだとか。

「コレを食べないと、正ノ木さんは来ないもんねぇ」って言葉を聞いたりした度に

子供ながらに「そうでしょう、そうでしょう」って。すごく嬉しかったというか、誇らしかったというか。



今でもすぐ思い出せるのは、頭に白いタオルを巻いて、腰にも白いエプロンを巻いて、下駄を履いて

「おーー、シノ、この粉もよく練れてるなぁ。巻きやすいなぁ。」

「粉を押さえるのうまくなってきたなぁ。」

「ちょっとおじいちゃんにも、そのたこ焼き買ってこい。」

「ちょっと、お祭り、見に行くか。」

とかいう、「タッチャン」こと、私の祖父。



中心柱だった祖父が他界して、

祖父の死とともに、この「正ノ木名物 肉フライ」も店じまい。

終わっちゃった。

 

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